いう人も多いけれど、
高村光太郎は本当に
真剣に思っていたのだと思う。
他人を疲労させてしまう
熱量の激しさが好きだ。


美に生きる     高村光太郎

一人の女性の愛に清められて
私はやつと自己を得た。
言はうやうなき窮乏をつづけながら
私はもう一度美の世界にとびこんだ。
生来の離群性は
私を個の鍛冶に専念せしめて、
世上の葛藤にうとからしめた。
政治も経済も社会運動そのものさへも
影のやうにしか見えなかつた。
智恵子と私とただ二人で
人に知られぬ生活を戦ひつつ
都会のまんなかに蟄居した。
二人で築いた夢のかずかずは
みんな内の世界のものばかり。
検討するのも内部生命。
蓄積するのも内部財宝。
私は美の強い腕に誘導せられて
ひたすら彫刻の道に骨身をけづつた。